【空飛ぶ車】

工学博士​ 技術士 

 宮内 直 

 生活様式の変化やテレワークの普及のため今後、大都市から200から500km圏内の里山や海辺等、自然が身近にある一軒家住まいが人気となろう。その通勤・交通手段として、図1の様なコンセプトの空飛ぶ車(1)が現れよう。本図は車体が見える様、主翼端の垂直尾翼は2点鎖線にした。その詳細は下記の通り。

 

【1】空飛ぶ車の基本コンセプト

 パラモータやウルトラライトプレーン(ULP)は自由に大空を飛回っており、空飛ぶ車も手の届く所にあるが、ニーズ直結の基本コンセプトが非常に重要であろう。即ち以下。  

①プロペラやダクテッドプロペラ、ジェットエンジン等の大推力の原動機を横向設置なので、飛行速度は300~600km/h、上向設置のドローン型より高速。航続距離は1000km。1時間程度で大都市の事務所やその近郊の工場へ通勤可能。

②自重は主翼の揚力が支えるので、上向プロペラが支えるドローン型より省エネ。

③地上走行時の前方視界等のため推進機と原動機は後部に装着。よって重心が後方になり、主翼は後部。その前方に前翼(カナード)を取付ける(先尾翼型)。

④地上走行が可能。その際また車庫内では主翼やプロペラはコンパクトに折畳む。

⑤離着陸は公道または全長100~200m程度の離着陸専用道路を使用する。またビル屋上等からのカタパルト射出も使う。専用道路の場合は、その先端に空母のスキージャンプ式甲板の様な傾斜をつけても良い。

【2】自動車より洗練した空力構造や動作

空飛ぶ車は自動車より高速飛行するので、より洗練した下記の様な空力構造や動作が必要になろう。

(1) ラジエータ

自動車のラジエータ部は一般的に下記である。

①車体前面は主流にほぼ垂直なブラフ形状であり抗力が大。

②冷却空気のラジエータへの流入速度は車速と等しいが、一般車の最大時速は150km程度なので圧損は小。

一方、1940年代の時速600km以上の高速機は、ラジエータ流入速度が大で圧損が大。そこで図2の様にディフューザにより減速して冷却能力と圧損を両立する拡散型ラジエータが用いられた。

​空飛ぶ車も時速600km以上なら圧損を低減する必要がある。そこで図3の様に主翼内にラジエータを収納すれば、下記の形態・構造と作用・機能を実現できる。

①冷却空気は差圧により、流入口(高圧の岐点付近)から流出口(負圧面)へ流れる。よって拡散型と同様、ラジエータへの流入速度は主流より小。

②流路断面積が一定の分配管内の流れは(2)、支管への順次の分岐により減速・昇圧(ディフューザ作用)。一方、集合管内は支管からの合流により増速・圧力低下する。一方、図3の様にラジエータの取付角が主翼の取付角より少し大きいと下記理由から、前流路と後流路の差圧はX方向にほぼ一定、よってラジエータへの分岐流がほぼ等速になる。  

・前流路は流路断面積がX方向に小、よって流れはラジエータへの順次の分流後も、ほぼ等速・等圧。

・後流路は流路断面積がX方向に大、よって流れはラジエータからの合流後も、ほぼ等速・等圧。

③原動機の高出力化に伴うラジエータの増設が、圧損は小のままX方向に容易。

ラジエータは図3の模式図では紙面垂直方向に2次元形状で、各冷却フィン(図3の水色線)はその入口に垂直だが主流方向に少し傾けても良い(10~30°程度)。また図10の筒型外筒に収納の場合は、円筒形にする。なお長方形の冷却フィンを紙面垂直方向に配置しても良い。その場合、冷却水の分配・集合管のフィンの上・下流への設置に以下の利点がある。

①紙面垂直方向、ラジエータの両端に設置でき、スペース的に余裕また配管が構造的に単純になる。

②分配・集合管と冷却空気の干渉(空気抵抗や乱れ)が無い。

なお主翼の圧力面・負圧面のラジエータ対向部は、スリット穴や多孔板にしても良い。

また本方法以外では翼面蒸気冷却方式(川崎航空機のキ64等が採用)、即ち主翼内に冷却液の高温蒸気を導き、外板で冷却・液化する方式を用いても良い。

(2) プロペラの折畳み

2枚羽根プロペラを前後に2つ取付けると(図4)、下記の動作が可能。なお羽根数が3枚以上でも、同様の動作が可能。なお図4の2点鎖線は、飛行時の前プロペラの位置である。

①飛行時は両プロペラを直行させ、4枚羽根相当の推力を出す。

②地上走行や入庫時は後プロペラを90°回し前プロペラと縦一文字に重ねる。その直径が2.5mでも全幅1.5mの車体から出ない。

【3】主翼の折畳み

主翼幅は一般的に10m以上になるので(軽飛行機セスナ172は11m)、走行車線(幅3~3.5m)からはみ出る。また地上走行時は揚力は不要なので主翼は折畳む必要があり、下記等の方式が使えよう。

(1) 小型水陸両用機Icon A5の方式

1940年代の艦載機の主翼の折畳み法には既に水平や上方、後方等、多数の方式。特に上方式は構造が簡単。ジェット機では可変翼(米国のF-111等)や斜め翼(NASA AD-1 Oblique Wing)。小型水陸両用機Icon A5 (3)の図5 の方式は、2006年のASME機械遺産 #238 (4)の2軸折畳み式に似ており、翼前縁を上側にし後方へ折畳むので全幅が小さく、公道上を運搬可能である。また本主翼構造はプロペラを左右両翼に取付ければ、米国のXC-142の様な原動機を主翼ごと機体に対し傾けるティルトウィング式の垂直離着陸も可能。

(2) スパン方向伸縮式    

図6の空飛ホバークラフトUH-18SPW5 (5)は、下記と思われる。

①翼型をしたリブは翼端のみ、翼付根や中間に無い。よって主翼は2次元翼になり、ねじり下げも無。

②前縁と後縁の2本の桁(スパー)でリブと車体を連結する。

③翼の上・下面は帆布製。プロペラ等からの高圧空気を注入し翼内圧を上げ翼形状を形成。

そこで空飛ぶ車に下記を付加すれば、スパン方向に伸縮・折畳みができよう。

①翼面は高強度で高可撓性の樹脂薄布(軽量ポリエステルファイバー布等)。

②桁はスパン方向に伸縮する多段伸縮式。サーボモータ等で駆動・位置決め制御。

③主翼後縁のフラップは薄翼なので金属製。図7の様に主翼と別体、収納は上方折畳み。

この翼面の薄布は高伸縮なので、下記等も可能。

①大迎角で本領域が低圧になると、薄布が膨張して剥離泡の発生を防ぎ、前縁失速を防止(流れ場が逆解法的に形状創成)。

②主翼の内圧により反り・厚みを変え、高速飛行時は小抗力の薄翼、低速では厚翼にし薄翼失速を防止。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(3) 放射状リブ畳込み式

①複数本のリブを図8の様に放射状に配し、翼の上・下面を形成。

②翼面は可撓性樹脂布製。推進機等から高圧空気を注入。

③地上走行時は翼内空気を排出しリブを図8の矢印の方向に畳込む(鳥の翼の形態・機能に近づく)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【4】推進機の外筒

推進機に外筒をつければ多数の利点があるが(1) 、下記の利点も期待できる。

(1) エジェクタ外筒

推進機の出口速度Cm Prは高速なので大きな負圧が発生(特にジェットエンジン)。よって図9の様に(エジェクタ効果のみの検討なので、空飛ぶ車の飛行速度Cm1 =0とする)、推進機と外筒間に隙間を設けると、負圧の吸引効果(エジェクタ効果)により、外筒入口からの流入空気量が増加し推力が増大する。この推力増大比Kr(≡ Fth / ρCmPr^2)はTh. von Kármánの理論値が2(idealな上限。それ以上は逆立ちしても出ない最重要値)、実験値は1.35~1.45なので (6)、本外筒の目算値は1.4程度を期待したい。

なおTh. von Kármánの理論では、推力Fthは運動量保存式より

​  

           

①式⑤の中辺の第2項は、プロペラの推力式①に相当(Cm1 <<CmPr)。またエジェクタは内部流れなので、外筒出口圧力P2も推力になる(中辺の第1項)。

②式⑤の右辺は推進機の推力(第1項)とエジェクタ効果(外筒入口からの空気吸引)による推力増加(第2項)。

推進機出口の負圧PPrにより吸引部が負圧になり(PPr =P suc)、吸引流れ(速度Cm suc)が生じるので、同部のエネルギ保存式(ベルヌイ)より

           

 

 

 

式⑤、⑥と質量保存式(連続の式)より、エジェクタの主設計変数であるA1/APrとQsuc/QPrが求まる (6)

またディフューザには良く知られる下記等の長所や機能がある。

 ①速度を圧力に変換し動圧回収するので、Cm 2の廃棄運動エネルギが小さく効率が大。

 ②推進機の出口圧(背圧)pPrを下げるので、吸引空気量Q sucが増大。

また留意点は下記。

 ①車体全長や重心上、ディフューザは短面間。よって広がり角θは10~20°(圧力回復率Cpは大、圧損は小) 。

 ②入口流れが旋回速度を持てば、その遠心力による壁への押付け効果で境界層の発達・剥離を抑制するが、プロペラ後流には本成分がある。また下記等の旋回流の発生法もある。

・螺旋溝やフィン(伝熱促進や石油輸送管等に事例)を、吸引部の外筒内周に取付け。

・推進機を外筒に取付る支持板を、多翼・短面間の前置静翼(7)とし旋回流(予旋回Cu1)を与える。

 ③この流れのプロペラ入口での回転方向成分Cu1の回転方向をプロペラと逆にし軸流ポンプの羽根車と同様、オイラーの式(角運動量保存則)を用い設計すれば(参考文献(8)の式(2・3)、(2・4)を参照)、予旋回による推力が発生。  

  ・一般的なプロペラの設計では、プロペラはその通過流れを軸方向にCm1(飛行速度)からCm2(十分に下流で)に加速し、推力Fth(流れの反力)を発生させる(下式。Rankine-Froudeの運動量理論。空飛ぶ車に固定の座標系で考える)。

 

           

           

   

           

 

 

     A;プロペラの流路断面積 Cm;プロペラ通過速度 D;プロペラ外径 ρ;空気密度

    ・プロペラの後流速度(地面固定座標系の絶対速度)Cm2 -Cm1の運動エネルギは、推力の仕事には寄与せず流出する廃棄エネルギである。その単位時間量である廃棄動力LNはρQ (Cm2 - Cm1)^2 / 2 。

    ・推力に軸方向速度の加速分⑦だけでなく予旋回分も加わると、この廃棄動力が相対的に小さくなりプロペラ推進効率η(= Lth  / ( Lth + LN ) )は増加する。

また推進機が翼端閉のダクテッドプロペラやダクテッドファンの場合は、推力も効率も下記により増大できる。

①翼端開放による循環の漏れが無い(プラントルのF関数は考慮不要)。また翼端漏れ渦も抑制し推力も効率も大。

②軸流ポンプ等と同様の下記の設計(8)ができる。

 ・誘導抗力の生じない自由渦設計(半径方向に全圧一定)により、推力も効率も大。

 ・全圧上昇は、軸方向成分Cmだけでなく回転方向成分(旋回速度)Cuも使って行うので(平均2乗断面でCu / U=0.2程度)、推力が大。

 ・後置静翼によりCuを回収すれば、Cm2 -Cm1の運動エネルギの様に廃棄されない。

なおジェットエンジンは高速(マッハ2程度)や大量輸送(旅客機等)のため、推力を効率より優先。一方、空飛ぶ車も高速化(時速700km以上)や大型化(バス程度の20~50人乗り)では、ジェットエンジン(ターボファンを含む)を数台、装着。その大流量・高効率化のキー技術は、大流量化とエジェクタ効果を持つ本外筒であろう。

 

(2) 筒型外筒

図10の筒型外筒は大流量化(吸込管)と          

エジェクタ、ディフューザの3機能を持つ。推進機は

高速小型化(高回転数)した小型ジェットエンジンや

ダクテッドプロペラなので、外筒は相対的に大きく、

A部(空洞)は下記等の機能を持つ。

①防音材の充填    

②ラジエータや射出式パラシュート、荷物等の収納

 

【5】その他の部品や装備

(1) パラシュート

飛行の安全のためパラシュートを装着。例えば、             

BRSパラシュートシステム(9)は図11の様に、小型の

固体燃料ロケットがパラシュートを引出し、落下速度の

小さい内(2秒後)にパラシュートが開く。

使用実績はセスナ等、多数あるが、先尾翼型の場合、

後尾のプロペラがパラシュートを巻込む危険がある。

そこで外筒上部に装着すると安全に射出可能となる。

 

 

 

(2) 高速飛行時の風防下げ

高速飛行では抗力低減のため前面投影面積を小さくしたいが、下記方法もあろう。  

①地上走行時  図12の実線の通り。

②高速巡航時  座席を後方に倒し、風防は点Aを中心に数100㎜程下げる(図12の2点鎖線)。

③乗降時    風防は上方に開く(図12の2点鎖線)。

本風防はアクリルの一体ブロー成型等で製作する。また風防と車体の摺動面については下記。

①風防の前部は点Aが中心の円弧なので、摺動面の隙間は一定にできる。

②摺動面の水密や気密(特に成層圏飛行)には、インフラートシール(補強布入りゴム製の中空ガスケット)(10)等を用いる。

 ・本シールは真空容器や気密扉等に用いるが、高圧空気(供給圧はシール圧より0.5kgf/cm^2以上、大)で膨張。

  ・1940年代のドイツの成層圏飛行機Ta152Hは大がかりな与圧装置は用いず、本方法を用いた。

 

 

 

 

(3) 高高度飛行

成層圏は大気の対流活動が弱く気象が安定、また大気密度ρが小さく抗力が小さいので、高速の省エネ飛行が可能。よって航続距離が大きな空飛ぶ車は成層圏に進出しよう。その場合は下記の様な技術が必要だが、1940年代の飛行機でほぼ確立済。   

①高度12000mの外気(圧力Pは地上の約1/5)を車体内へ吸入し昇圧(0.6kg/cm^2程度)。

  上述のTa152Hは圧縮機は用いず、外気を吸気管で吸入し、その700km/h程度の動圧(ラム圧)により昇圧。

②ρとPが小さいので、大容量・大昇圧の多段過給機と、その圧縮空気を冷却する後方冷却器が要る。

 ・Ta152 Hは2段3速過給機付きのJumo213Eエンジン(高度1万m以上で1260馬力、765 km/h)。

 ・自動車は2000年以降、省資源と地球環境問題対策で、エンジンの排気量や気筒数を減らすダウンサイジングが主流になった。そこで小排気量で大量のガソリンを燃焼するため過給機で大量の空気を圧縮。

  排気タービンは排気利用なので機械式よりエンジン全体効率が良いが、低速域は排気圧が低く出力不足や低トルク、

  ターボラグがある。その対策にはツインスクロールターボ(入口流路が低速域は狭く、高速域は広い)や低速域用機の並

  列接続(シーケンシャルツインターボは小型タービン、ツインチャージャは機械式)等がある。

③冷却能力はρが小さいと低下、よって高高度ではラジエータが大流量で大型化するが、上述の図3の方式はラジエータの大型化や増設が容易。

(4) タイヤ、降着装置

タイヤが4ケあれば、着陸時の安定性や衝撃吸収性が大きいが、下記の様な衝撃吸収装置・機構をつけても良い。

(1) 空気ばね

空気の圧縮による圧力上昇を利用するので下記の利点があり、重量が大きい電車やバスまた建築物の免震装置等で良く使われる。自動車ではトヨタのソアラが世界初採用(1986年)。

①金属ばねより反力・復元力が大。  ②固有振動数が小。

更にオリフィスの絞りによる圧損が、衝撃エネルギ吸収や減衰特性を向上させる。 

(2) 鳥脚形の降着装置

トーションバー(ねじり棒ばね)はよじりモーメントの復元力、ばね特性を利用したばねであり、その利点は下記。このため戦車や建設機械のキャタピラの転輪に用いる。

①単位重量の弾性エネルギが大きく軽量。

②数10トンの大荷重を支え、また凹凸の激しい悪路の衝撃荷重に耐える。

③下記理由から、車高やキャタピラ高さを低く、また車内空間(トランクやエンジン室)も広くできる。

 ・細い長尺棒。

 ・変位は回転のみであり、通常のばね式サスペンションの様な垂直方向の変位が無い。

④機構学的構造が非常に単純なので、故障し難く維持管理も容易。

自動車ではポルシェ911。またホンダはトーションバーストラット式フロントサスペンションをシビックSiやバラードCR-X等のスポーツセダンに採用し車高を低くし空力抵抗を削減。またサスペンションを床下配置しエンジン室を広くした。

 着陸時に発生しうる大きな衝撃荷重(先尾翼型では前翼の失速)や地上走行時の変動荷重の吸収も含め、車輪に付属の降着装置は図13の様にトーションバーを用いてもよい。本方式はねじり腕により、車輪からのモーメントをトーションバーに伝える。また下記構造と機能も併用しても良い。

①飛行機で多用のオレオ等の緩衝装置(ショックアブソーバ)。オレオはシリンダとピストンから成り、シリンダ内に高粘度の油と窒素等の圧縮ガスを封入。オリフィスを通る油に圧損が生じ衝撃エネルギを吸収するが、斜め取付は垂直取付よりストロークが長く(1 / cosθ倍)油容積が大なので、下記の利点がある。なお湿地や水田、川に生息する鶴や鷺は餌が豊富、また天敵の哺乳類からも安全で大型化したろうが、本構造と機能は着陸時に長い脚を曲げるこれら水鳥に似る。

 ・衝撃エネルギの吸収量が大。

 ・衝撃吸収時間tが長くなり衝撃力Fが小(力積の式よりF=MV / t  M;空飛ぶ車の質量、V;着陸速度)

②オレオはオートバイや自動車の前・後輪サスペンションの様に、圧縮コイルばねと併用。

③ねじり腕は途中にヒンジが入り折曲がるアーティキュレーテッド式にする。

なおバンパー棒とトーションバーの接触部を歯車のラック・ピニオン機構にすれば、下記動作によりトーションバーはバンパーの衝撃

を吸収できる。

①バンパー後部のバンパー棒は、バンパーの障害物や地面への衝突時に後方に移動。

②その後部は図14の様に、長さLNの歯が無い区間と数ケの歯が着く区間が交互にあるラックとなる。

③バンパー棒の移動によりラックの歯部分がピニオンと嚙合うと、トーションバーを回す。

④歯が無い区間では、トーションバーが無負荷位置に復元。

⑤この③④の動作を複数回繰返しバンパーに加わる衝撃エネルギを吸収。

⑥本ラック部の全長をバンパーと生存空間の先端までの距離と等しくすると、バンパーが乗員の生存空間まで達する間、衝撃エネルギを吸収し続ける。

⑦バンパー棒の後部先端にも、重大衝突時には破壊を前提にしたオレオを装着しても良い。

⑧本構造・動作なら上記の鳥脚形の降着装置のオレオの衝撃吸収も動作する。

 

 

 

 

【6】空飛ぶ乗物の更なる展開            

下記の様な乗物も現れよう。 

(1) 水陸空車

図15の様に車体下部を

小改造(水密構造。

主翼は上方移動等)し、

前後に水中翼をつける

と空飛船にる。

①水中前翼は、上述の

前翼(カナード)を兼ねる。

②両水中翼の翼端に

車輪をつければ、空水

陸車になる。

③水中後翼は車体下面

収納。または収納せず

に飛行中に揚力を発生。

また後縁フラップの2段目

にしても良い。

④水中後翼は無くし、車体後部の浮力で支持しても良い(車体の大部分は水上で、抵抗は少)

⑤ウイングチップフェンス的な垂直尾翼にして(主翼の上下の両方にウイングレット)、そこに水中後翼をつけても良い。

 

(2) 無尾翼機型の気球グライダ(体積力駆動)

図16の Fauvel AV.36の様な無尾翼グライダ等に下記の動作を加えれば、重力駆動飛行となる(動力はヘリウムの圧縮等のみ)。100人乗り以上の大型化、またほぼ無動力の地球一周飛行も可能。なお本グライダは2つの体積力(浮力と重力)を利用し動力が不要である。

①主翼の上面(負圧面)は高耐圧・高可撓性樹脂の皮膜にし(スーパープレッシャー気球相当)図17の様にヘリウムを注入。気球として高度H=20~50kmまで上昇。

②ヘリウムを圧縮機により圧縮・タンクに貯蔵し、主翼を翼型にして高度100m程度まで無動力で滑空。

③この2動作を繰返す。

なおプロペラとモーターを装着し下記機能を持たせても良い。

①プロペラである程度、自由に飛行(世界一周では多数の寄港先があろう)。

②プロペラは逆転すると風車、モーターは発電機になるので(ポンプ逆転水車と同様)、回生発電を行いバッテリに充電。

  翼負圧面はフラッタ(流体力による強制自励振動)や衝撃波等、強度上の制約が大きいので、急降下制限速度は900km/h程度になる。そこで減速させるために回生発電を行う。

③その電力は上述の圧縮機のモーターの駆動等に用いる。

 

 

これらにより下記の様な世界一周が可能であろう。

①高度H=20kmからの、揚抗比ε=30の高アスペクト比翼による滑空距離Lは600km(=H ε=20×30、理論値)。

②上述の急降下制限速度より、平均滑空速度は600km/hとすると、滑空時間は1時間。

③気球の上昇速度は一般的に18km/h程度だが、本気球グライダの2回目以降の再上昇時には800km/h程度の滑空速度による惰力上昇が可能(位置エネルギの有効利用)。よって平均上昇速度は40km/hとすると、上昇時間は30分。1回の上昇・滑空時間は1.5時間。

④赤道上(周長4万km)は67回(=40000 / 600)の滑空で一周。所要時間は約4日(100時間=1.5×67)。

⑤私の住む京都を通る北緯34°50’線上の世界一周は(周長32833km)約3日(82時間)。

(3) 空陸ドローン等用のプロペラ・ダクテッドファン内蔵の車輪

図21の中国の空飛ぶ車の様に、前後4ケの車輪に

プロペラやダクテッドファンを内蔵し図18のA、B方向に

回転させると、下記の3モードの運転ができる。

  地上走行モード 図18の通り。

  上昇飛行モード(離着陸) 図18の位置から

  A、B方向とも90°回転。

  前進飛行モード 図18の位置からB方向のみ

  90°回転。

 

このプロペラ内蔵車輪の構造と、モーターによる車輪と

プロペラの駆動切替え動作は下記の通り。

 ①図19-aの様に、車輪1にプロペラ2を内蔵。

  プロペラ後流は矢印の様に流れる。

 ②車輪1と車輪軸3はスポーク4で連結。

 ③プロペラ軸5は中空の車輪軸3を貫通。

 ④モーター軸10の歯車9は左右移動が可能なので、

  各運転モードでは車輪とプロペラの一方のみが

  回転し駆動。

  上昇・前進飛行モード 歯車9は図19-aの様に

  歯車7とかみ合い、プロペラ軸5が回転。

  地上走行モード    歯車9は左方向へ移動し

  歯車6とかみ合い、車輪軸3が回転。

図19は概略図なので、歯車9の左右移動法は省略したが、空を飛ぶので軽量化や信頼性が重要なので、単純でロバストな構造・機構が望ましい。例えば後述の永久磁石同期モーターはコンパクトで軽量なので、その支持台等により移動させれば、歯車9も移動する。また下記の様な方法もある。.

 ①モーター軸10をリニアスライドガイドの様に、ステッピングモーターと精密ボールねじで左右に移動させる。

 ②オートバイの変速機の様なシフトドラムの回転によるシフトフォークの左右移動により、歯車9はモーター軸10軸上を移動。 

なおこれら方法では、車輪とプロペラの駆動切替えは低速または停止時になるが、離陸中等は高速走行する車輪からプロペラへの切替えになる。そこで図19-bの様に、手動変速機の歯車による減速比切替え(シフトチェンジ)とほぼ同じ機構を用いても良い。

 ①歯車6も歯車7も各々、歯車12と歯車9とかみ合っており、モーター駆動中は常時回転。

 ②各運転モードで、歯車6と歯車7は各々、車輪軸3とプロペラ軸5をシンクロメッシュのスリーブ(後述)により回転させる。

 

 

 

なお自動車の手動変速機とスリーブは以下の構造である。

 ①クラッチが連結すると、エンジンからの回転はインプットシャフトからカウンターシャフトに伝達。

 ・カウンターシャフトの1から5速ギア(歯車)は、同シャフトと一体なので、エンジン駆動・クラッチ連結中は常時回転。

 ・インプットシャフトとアウトプットシャフトは直接には連結していない。

 ②1から5速ギアとかみ合うアウトプットシャフト側の各ギアも、エンジン駆動・クラッチ連結中は常時回転。

エンジンから駆動輪への回転とトルク・駆動力の伝達動作を、図19-cの2速の例で示す。

 ①2速にシフトレバーを入れると、シフトフォーク(図19-cでは省略)によりスリーブは左方へ移動。

  スリーブの内周はアウトプットシャフトとスプライン嵌合なので、軸上を左右に移動可能かつトルクを伝達。

 ②アウトプットシャフト側の2速ギアは、スリーブと側面のかみ合い歯により連結し回転。

  その際、摩擦により両者の回転速度差を無くす等速かみ合い機構がシンクロメッシュ(材質は真鍮リン青銅。摩耗すれば交換の要)。

 ③アウトプットシャフトも上述のスリーブとのスプライン嵌合により回転し、エンジンからのトルク・駆動力を駆動軸へ伝達(図19-cの黒太破線)。

 なお図19-cでは以下。

①シフトレバーを1速に入れると、本スリーブは右方へ移動。

②図19-cの様に、スリーブは他に2ケある(3・4速切替えと後進用)。

③後進用スリーブにつくギアは勿論、アウトプットシャフトを逆回転させる。

 この様に、クラッチや変速機は乗物(自動車からオートバイ、自転車)や産業機械等で様々の機構があり、非常に精巧な機械だが、重量が50kg以上なので空飛ぶ車には重い。また飛行はほぼ等速度で直線また自動車の様な路面からの非定常力の外乱が無いので、空飛ぶ車はサスペンションも簡略・軽量化できよう。また原動機がモーターなら、回転数制御が容易なので変速機は不要。ただ上記の出力切替え等でこれら洗練された機構学的機構の用途は今後も多かろう。

 また、これらには『日本人は神が宿ると大切にして来た道具』と同様の機能美もある。また自動車も空飛ぶ車も全ての機械はアナログな実世界に存在するので、この様なアナログ機構は今後も重要。日本の伝統工芸品や昭和の諸々の機械、また自動車やイタリアの自転車王ビアンキが愛されるのも、その機構・構造・動作の機能美、また人に近しいためであろう。なお勿論、人も食べ物や衣服と共にアナログ世界に生きスポーツや買物、観光旅行をする。一方、極論だがデジタル世界の住人はカプセルホテルの一畳間とカップ麺かハンバーガー(マイクロソフトのビル・ゲイツの大好物)で事足りる。

 

(4) プロペラ内蔵車輪の他の形態

電磁クラッチ・ブレーキ内蔵の

車輪クラッチ室とプロペラクラッチ

室を図20の様にモーター11

の両側に設ける(本例

では車輪軸3が回転中)。

アーマチュア(磁気回路形成の

可動鉄片、JIS B

1404-1:2005)が、

オリエンタルモーターのクラッチ・

ブレーキ付モーターに似た

下記の動作を行い、

車輪かプロペラを回す。

 ①モーターの回転・トルクの

  車輪軸3への伝達

  方法は下記。

  ・車輪クラッチ室のクラッチ

   コイル21を通電・

   励磁する。

  ・アーマチュア23(車輪

   軸3に連結)が

   クラッチ板22(モーター

   軸10と共に回転)

   に連結。

 ②モーター軸と車輪軸の

  切離し法は

  クラッチコイル21の通電

  解除(23と22の

  連結解除)。更に

​  ブレーキコイル24を通電

  しアーマチュア26とブレーキ

  板25を連結。

 ③モーターの回転・トルクのプロペラ軸5への伝達方法は下記。

  ・車輪軸3とモーター軸10は中空であり、プロペラ軸5が貫通しアーマチュア軸38に連結。

  ・プロペラクラッチ室に固定した軸受37はアーマチュア軸38よってプロペラ軸5も支持する。

    プロペラ軸5を両持ち支持したい場合は、車輪軸3内に滑り軸受等を装着する。

  ・プロペラクラッチ室の構造またモーターの回転・トルクのプロペラ軸5への伝達法は車輪クラッチ室とほぼ同じであり、クラッチ

   コイル31を通電しアーマチュア33をクラッチ板32に連結する。

 ④モーター軸とプロペラ軸の切離し法はコイル31の通電解除後、ブレーキコイル34を通電しアーマチュア36とブレーキ板35を連結。

なお関連して下記。

 ①電磁クラッチが板ばねやスプライン駆動形なら、電磁ブレーキのコイルやアーマチュア等は不要。

 ②トルクが大きい場合は摩擦形では無く歯面かみ合い形にして確実にトルク伝達する。

 ③軸受は市販・汎用の玉軸受等を使い、その形式や内径、個数等は適宜、決める。その固定も一般的方法を

  用いるが(例えば、段付き軸に止め輪や押さえ板で固定。回転体は軸受室等)、図20は概略図なので詳細

  は省く。

(5) プロペラ・ダクテッドファンとモーター内蔵車輪

モーターは横軸ゲートポンプ等で使用例のあるアウターロータ形にする。その左右に図21の様に取付けたクラッチの連結と切離しにより、車輪とプロペラの駆動の切替えを行う。その構造と機構・動作は下記の通り。 

①回転子5はモータ外周にあり、磁石6がつく。

②固定子7(コイル)は支持軸3(回転せず)に取付る。        

③支持軸3には軸受10、9、8を介して各々、回転体のモータクラッチ14、回転子5、プロペラクラッチ24が取付く。

 ・回転子5は自動車の車輪のハブベアリングと同様、軸受9のみによる片持ち支持だが強度上で必要なら、左端面

  にも軸受を設け両持ちにする。

 ・プロペラや車輪の駆動時はクラッチが連結するので(後述)、軸受8や軸受10も回転子5を支持する。

  ・回転子5と左右のクラッチ間の非通電時の隙間確保のため、これらは左右に移動しない構造にする。

  ・軸受は汎用の玉軸受等が使え、外輪の回転体への固定と内輪の支持軸3への固定は一般的方法で良い

  (軸の段差端面への押さえ板によるねじ固定等。図21は概略図なので省略)。

④車輪駆動モードでは回転子5の右端のコイル11の通電・励磁により、アーマチュア12が回転子5の右側面に連結。

  本コイルは回転子内にあるので、通電は

  ブラシを用いる。

⑤回転子5の回転とトルクはアーマチュア12を介し

車輪クラッチ14、更にスポーク4から車輪1へ伝

わる。 

・この電磁クラッチの伝達トルクが大きい場合は、

 摩擦形(乾式、湿式)では無く歯面かみ

 合い形(歯車式やツースクラッチ等)にし機械的

 ・構造的に確実にトルク伝達する。

・油圧や流体クラッチを用いても良い。

⑥ばね13(板ばね等)は伸びて復元力が

発生しており、コイル11の通電解除すると、

アーマチュア12は回転子5の右側面から離れクラッチは

切離される。

⑦プロペラ駆動モードもほぼ同様の機構・動作、

即ちコイル21とアーマチュア22、ばね23が車輪クラッチ24

の回転子5の左側面への連結と切離しを行う。 

⑧プロペラ2のボス部には圧損の低減等で必要

なら、スピナ30を取付ける。  

⑨プロペラのボス比(モーターとプロペラの外径比)は

0.25(水冷レシプロエンジン機相当)から0.3(空冷

レシプロエンジン機相当)、ボス面積比は0.1程度を

目安にする。

本方式の利点は下記。

 ①モーターも車輪にほぼ内蔵。

 ②アウターロータ形の永久磁石同期モーターは下記の

  利点があり、空飛ぶ車に有利である。

  ・永久磁石により界磁磁束が得られ励磁

   電流が不要なので、高効率で高出

   力密度。

  ・誘導モータの様なすべりが無く、また2次

   電流により導体に発生する2次銅損が

   生じず高効率。

  ・コンパクトでも大トルクを出せる。

  ・薄型で短面間にできる。

 ③永久磁石を表面磁石形(SPM)と同じく、回転子の表面に貼付けるので下記。

  ・磁石がロータ表面に出ており有効磁束量が大で高効率。

  ・トルクリプルが小さく、トルクの線形性が良く制御性に優れる。

  ・磁石は回転子の内周に貼付け遠心力は外向きなので、埋込磁石形(IPM)とほぼ同等の機械的な安全性

   になる。よって高速回転が可能。

  ・構造が単純。固定子のコイル巻作業が構造的に容易で、安価。

 ④永久磁石同期モーターは自動車を中心に家電製品からロボットまで多用途なので、高性能化(高効率や高出力化、

  高速小型化、省エネ等)の技術革新が進行中であり、空飛ぶ車にも還元されよう。

  ・その制御用インバータはSiC素子により、損失や高周波数スイッチング、容量等で高性能・高速化。

  ・本モーターまた水素燃料エンジン等の原動機は多様化・高性能化中であり、空飛ぶ車も高性能化させよう。

  ・永久磁石の画期はネオジム磁石(佐川眞人が1984年に発明)であり、磁束密度が高く経年減磁が緩やか。

なおアウターロータ形モーターは本体だけでなくプロペラ等の推進機の構造も下記の様に単純化し性能向上が容易である。

 ①車輪側もプロペラにすれば、ドイツのドルニエのDo335やシースター等と同様の大推力のプッシュプル式プロペラ(タンデム双

  発型)になる。

 ②前後のプロペラの回転方向を変えトルクを打消し合う場合は、下記の方法がある。

  ・一方のプロペラの回転方向は歯車を介して逆にする。

  ・モーターを前後2分割する。

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【7】おわりに 東アジアの流体機械・流体技術

道教の錬丹家は不老長寿を追い求め、硝石の製造(地中での固体発酵)や硫黄の

精製、火薬等、様々の発明、科学的発見をした。4世紀前半の東晋の葛洪が有名だ

が、著書の抱朴子には空飛ぶ車があり図22の様に、仙人が乗り左方へ進む(11)

車輪は10数枚の薄翼のオープン羽根車であり、その取付角は適切で翼の手前側が

負圧面になる。またプロペラ入口から30%弦長位置(揚力の着力点付近)を環状に

繋ぎ補強しており、風車等の実用途での工夫の反映と思われ興味深い。また空飛

ぶ車の後流部はその乱れにより、水蒸気が霧化し雲になっているのも面白い。

 また下記理由からも本図はプロペラの可能性が高く、ダビンチが鳥の翼の形のみを

真似た人力飛行機を考えた時から1200年前に、プロペラの原理や流体力を用いた

様々の機構・機械が考案されていた。

①滑空飛行の知識は古くからあり、また実際に飛行。

 ・錬丹家は鷲が上昇気流に乗り空を穿ち旋回する様を観察し、滑空や迎角等の

  空気力学の知識を得ていた。

 ・北斉の都、鄴では凧をつけた北魏の拓跋氏の王族が高さ30mの塔(金鳳台)

  から2.5kmを滑空、6世紀のハンググライダであろう。

②動力の小さい揚力式推進機の原理は、日本や中国では早くから周知。

 ・竹とんぼ(プロペラ、ヘリコプタのローターの原形)は飛車の名で抱朴子にある。日本では奈良時代の長屋王邸跡か

  ら出土。

 ・揚力式推進機の軸動力は周知の様に、抗力式(櫂等)より大幅に小(ほぼ1 / ε)。また揚抗比ε(≡ CL /

  CD)はグライダやプロペラまた艪の様に高アスペクト比だと、翼端の循環の漏れが小さく大(28~60)。

 ・艪は揚力式の往復動式推進機なので、小動力で大推力。芸予諸島(しまなみ海道)の三島村上水軍の小早

  船は図23の様に艪を自在に操り、快速で小回りも効き「船に乗るより潮に乗れ」で瀬戸内海を支配した。

 ・大山祇神社の博物館にある村上水軍の船は驚く事に、艪4本の十字組みの推進機を2基、船尾に装着(図

  24)。これは揚力式・回転式推進機、即ち世界初のスクリューであろう。

   *回転式の推進機と原動機は並進式より、高速小型・高出力化が可能な点でも画期的。

   *現在のスクリューはチェコ系オーストリア人のJ. Resselが1827年に発明(オーストリアは当時、イタリア北東部のトリエステ港を領

    有)。またヘリコプタはハンガリーのTh. von Kármánが1917年に世界初飛行。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

③軸受とその鋳造技術も、漢代には十分に確立。

 ・軸受は回転機械に必須だが、漢代には馬車の車輪と車軸間に図25の様に、1組の鋳鉄環からなる軸受(外

  輪が回転、内輪は静止。前漢・済北王陵出土)が使われた(11) 。鋳鉄部は錆びているが、金メッキ部は原形

  を留める。

 ・馬車の輸送力や高速性、耐久性は本軸受により大幅に向上し、川船と共に広大な国土の重要な輸送手段と

  なったろう。また本軸受技術は水車等の回転機械にも転用され、その性能と耐久性を向上させたろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

④鋳鉄は中国が紀元前4世紀に実用化、欧より約1800年も先行。石炭使用の高温溶鉱炉により様々の農具(鋤や鍬、斧等)や工具(小刀や鋸、錐等)等を規格化し大量生産した。

 ・麦は天水のみで育つが、稲作は大規模な当時、世界有数の治水・灌漑インフラ(用水路や溜池)が必要。

 ・日本も古墳時代の4世紀には、農具や土木用具を可鍛鋳鉄により量産。前方後円墳は祭祀王権と共に、鋳鉄による豊穣な生産力の象徴と思える。

 ・2019年に洛陽の車馬坑で駕六(周王の権威の象徴の6頭立て馬車)を実見、東周の2500年前の栄華を思った。更に逆転防止のラチェット歯車(図27)の精巧さに驚き、用途が非常に気になった(馬車用か)。

⑤並進・回転変換機構(機構学)も漢代に発達。

 ・図28の様な複動式ピストンふいごとクランク機構付き水車が、上述の高温溶鉱炉で用いられた。特に漢江流域の南陽付近で2世紀頃に多用され、クランク・ピストン機構を介して溶鉱炉の巨大ふいごを動かした。大きな水車は直径2250mm幅300mmもあり、駆動ベルトによりクランクを15倍の周速比で回転させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

⑧本機構はワットの蒸気機関と同じ、即ち産業革命の基盤動力源である蒸気機関は中国の賜物。中国から欧への技術的影響はルネサンス期の3大発明や紙だけではなく、16世紀の産業革命期の様々の機械技術の突然の出現も、中国の当時の驚くべき先進技術による(11) 。アジアへの海路を押さえたイギリスは、アカ汲みポンプや防水区画等の船舶技術、更にクランクやピストン機構等も導入。

⑨吊橋も中国起源。四川省は深い谷川が多い一方、竹が豊富なので(竹ケーブルは鋼の半分程度の大張力)、漢代から吊橋が発達。安瀾索橋(灌県)は懸垂式で全長315m幅3.6m、径間8ヶ(11)

⑩原油等の大深度地下の掘削技術は四川省の製塩技術が起源。塩水とその加熱用の天然ガスを深井戸から汲上げた。その掘削には全長3m、重さ130kgの鋳鉄製ドリル刃と大張力の竹ケーブルを用いた(11)

 

【8】機械設計の寸話

 機械設計では寸法効果・重量効果が強度(冬の北太平洋での1940年代の大型溶接船の低温脆性破壊は有名)だけでなく、性能(流れでは、Re数や相対粗度等)や機能、動作でも非常に重要である。またポンプやファン等のターボ機械は下記等の、無次元特性量が非常に重要。

①回転数Nと流量Q、揚程Hによる比速度Ns(≡NQ^0.5 / H^ 0.75)は遠心・斜流・軸流の3形式とその動作・流れメカニズム(遠心力効果と相対速度の減速効果等)を見事に表現。速度三角形(羽根車の入・出口の絶対速度と相対速度のベクトル)と共にターボ機械の基本概念である。

  なお熱力学的状態量には示量性と示強性があり、両者の積はエネルギだが(共役、双対関係)、Qは単位時間量なのでQHは動力(エネルギや仕事の単位時間量)になる。

②高速小型化や大出力化、大容量化では、Nsと共に流量係数Φや揚程係数ψも指標になる。

  東日本大震災の救援と復興では、クボタの排水ポンプ車が当時の東北支社長の中本善貴氏と支援・復興事務局長の松田徹氏の陣頭指揮の元、活躍したが、高速小型化した斜流ポンプが使われた(なおそのNsは失念。クボタカタログや国交省地方整備局の資料を見てもNが未記載なので不明)。

③高速小型化の際は、キャビテーション性能が問題になる事が多く、吸込比速度S(≡NQ^0.5 / Hreq^ 0.75、  Hreq;必要有効吸込水頭)が性能特性量になり、性能開発目標は一般的に2000以上だった。また機場計画では Hreq=10.33(m、大気圧)のSが、1つの目安になる。

 なおジェットエンジンはレシプロエンジンの往復動式の各部が回転式になり、大幅な高速小型・高出力化したが、機械進化の上で非常に興味深い。

 ①レシプロエンジンの過給機(遠心式圧縮機)は多段軸流式になり高速高圧縮比になった。

   GE90-94(ターボファン、Φ7290 × L3404 mm、ファンはΦ3124 mm、推力42502kgf、416.8 kN)は低圧3段、高圧10段。全圧縮比は40:1。

 ②レシプロエンジンの排気タービンは、高速高出力・大流量の多段軸流式タービンになった。

   GE90-94は低圧6段、高圧2段。

 ③レシプロエンジンの様な間欠燃焼と違い回転式の連続燃焼なので、より高出力また低振動。

 ④レシプロエンジンの推力式排気管は、ジェットエンジンの排気口に対応。 

  ・イギリスのロールスロイスのマーリン61(1380馬力、 3000rpm)の推力式排気管は推力を68kgf、馬力は10%向上させ、特に大気圧の低い高高度で効果。

  ・マーリン61は本排気管と共に、高効率(70%)で高過給圧(+17.57mAq)の2段2速過給機(羽根車径は前段Φ304.8、後段Φ266.7mm)と後方冷却器(過給機で圧縮され250℃になった空気を冷却)、更に高オクタン価ガソリン(130~140)によりエンジンを大馬力化し高高度性能も向上させた。このためスピットファイアは上昇高度が3050m、時速は124km向上(上述の様に空気密度が小さい高高度では抗力が小さく、速度も上昇)。

・米国のP51AはアリソンV1710-81(1200馬力、3000rpm)を搭載し高度6100mで628km/h。他の水冷エンジン機(日本のキ61やドイツのBf109F)とほぼ同じだが、マーリン61に換装し高度9150mで708km/h。時速は80km向上だが、スピットファイアよりは小。

・キ61の主翼のアスペクト比ARは7.2(=W^2 / S=12^2 / 20、全幅W=12m、面積S=20m^2)、Ta152Hの8.87(全幅14.44m)よりは小さいが6前後のP51AやBf109Fよりかなり大きいので、マーリン61に換装すればこれらより高高度性能が良かった可能性がある。

この様にジェットエンジンは 圧縮着火のディーゼルではなく火花点火のオットー式の技術的発展なので、その熱力学サイクル(熱機関の作動流体が行う循環的過程。その状態量である圧力や体積、温度、エントロピも循環的に変化)であるブレイトンサイクル(断熱圧縮、等圧加熱、断熱膨張、等圧冷却)はオットーサイクル(断熱圧縮、等容加熱、断熱膨張、等容冷却)に良く似る(点火・燃焼過程が少し相違)。 

 

 

 

 

 

 なお大規模発電(火力や原子力)はボイラ(蒸気発生器)と蒸気タービンを用いて蒸気の持つ熱エネルギーから動力を取出す下記特長のランキンサイクルである。本サイクルはR.・トレビシックの蒸気機関車以来、200年以上も現役なのも興味深い。

 ①外部熱源なので、大量かつ様々の種類の燃料を用いる事が可能(ゴミ発電もあり)。

 ②水が作動流体の閉サイクル。

・水の等圧での蒸発・凝縮を利用のため、等温過程が多く熱効率が良いカルノーサイクルに近い。

・その温度範囲も水の沸点を中心に、比較的狭い。

  ・水を比体積の小さい液相で圧縮のため、タービンで得る動力に比べポンプ動力が小。

・蒸気は大出力向き(特にタービン形式の場合)。

  ・水は地球上に大量にあり、化学的(酸化等の反応性が低)また熱的性質(比熱や潜熱が大)が良い。

なお地球温暖化や資源枯渇、また天然ガス・原油高による貿易収支の大赤字(2021年は5兆3748億円)のため、核融合発電の実用化は急務であろう。ただプラズマの超高温(数億°C)に耐える核融合炉の材質等の問題があり、新たな熱力学サイクルや常温核融合が望まれるが、水を作動流体とする下記の様なランキンサイクルが当面は使われるか。

 ①直径、数~数10mの球形真空容器内に、磁場で超高温プラズマを閉込めて核融合。

 ②比熱や潜熱が常温液体で最大、また大量供給も可能な水を使用。

  ・容器内壁は核融合の輻射熱により非常に高温になるので、水で冷却。

  ・核融合による膨大な熱量に見合う作動流体は、水しかない。

なお日本には下記の様な、長年の量子工学の技術蓄積があり今も新たな応用に発展中だが、新たな輸出競争力の高い産業の原資になって欲しい。

 ①金属ナノ粒子(表面活性や量子効果を発現) 

   石油化学の水素化脱硫や自動車の排ガス浄化触媒。また水素吸蔵合金技術は燃料電池の水素分離膜に発展。

 ②プラズマエッチング(産業の米、半導体の製造技術)

 ③遷移元素の酸化物の電気的特性

   高温また圧力や歪み印加による格子間隔の圧縮により、電子が粒子性と波動性の相変化をするモット境界等

また高橋亮人博士のTSC理論(4ケの重水素原子核のほぼ正三面体配置によるBose-Einstein 凝縮の核融合)は、常温核融合を実現するか興味深い。 

また勿論『機械はある目的のため、幾つかの機能を確実でロバストに具現化する形態・構造・機構・動作・作用を持つ』が、大型・高性能化する程、機能分化や好適化が重要になる(12)。鳥の翼は浮揚と前進の2機能が未分化だが、飛行機(鳥より遥かに大型で重い)は翼が浮揚、推進機が前進と機能分化したのが下記も含め、その成功の大要因である(ドローンは垂直離着陸に捉われ、両者が未分化)。

①本機能分化により、重い推進機(原動機も含む)は翼ではなく機体内に収納。大出力化も容易。

②ドイツの19世紀後半の原動機革命も画期的な進化、即ち構造・動作がシンプルでタフ、コンパクトで軽量だが大出力の内燃機関(オットーとディーゼル)が出現。『かつて無い強力な交通・輸送手段である自動車と飛行機は原動機革命の賜物。20世紀の産業・経済、更に文明をも牽引』また乗物は安価な大量生産により大衆化。

なお上記の様に、東アジアでは翼(ハンググライダ)と揚力式・回転式推進機の原理が古くから知られ原形もあり、二宮忠八に十分な資金があれば、ライト兄弟より先に空を飛んだろう。また2002年の春、ミュンヘンのIFAT(水処理や環境の世界最大の展示会)に出張したが帰国日の朝の寸暇に、地球の歩き方を急いで見てトラムに乗り中世の細い街路を抜け、ドナウ支流のイーザル川の中州のドイツ博物館へ行った。ドイツの18~20世紀の輝かしい科学・工業技術が所狭しと並び、これら伝統を次世代へ引継ぐ強い意志と誇りも感じた。また当地はアルプスを超えればもう南国イタリア、澄渡る青空からの光溢れる館内も(ゲーテも十分に満足しMehrとは言わない程に)非常に印象的だった。19世紀の飛行船は大きな気球の下に貧相な小部屋、薪ストーブの様な貧弱な蒸気機関の後方に小スクリューが付く。歯車等の動力伝達機構は現在と同じだが、空を飛ぶには甚だ非力。上述のBf109Fや世界初の実用的ジェット機Me262と見比べての、この発見に近い驚きは『19世紀と20世紀の技術・製品の決定的違いは原動機』。またMe262の後退翼や多段軸流型ターボジェットエンジン には『優れた機械・技術は誕生時から完成形』も実感。

 また往復動式内燃機関原動機、レシプロエンジンを搭載したプロペラ飛行機の頂点は1940年代も実感。当時の多様で厳しい飛行要件(速度や上昇力、急降下、運動性、高度、航続距離等)の選択圧により機体や翼、フラップ等、また推進機と原動機とその補機(過給機や排気タービン、燃料噴射弁、ラジエータ)の性能・機能と空力的形態が試行錯誤され、大空へ適応拡散した。また図30の高々度飛行用の大馬力空冷エンジンBMW801TJは、以前からその存在を知っていたが、思いがけずの実見に非常に驚きかつ印象的だった。BMWの技術者が熱心に復元したが、内燃機関の最高峰と思えた。

①強制冷却ファン    外径Φ810mm、12枚羽根

上述の様に高々度では大気密度ρが小さく冷却能力が低下。そこで機首の強制冷却ファンで空気を大量に吸引し大馬力エンジンや中間冷却器、過給機を冷却。

②エンジン    空冷2重星型14気筒、直接噴射式、エンジン外径1290mm。 高度12000mで1500馬力。

③過給機(排気タービンと過給機)

 ・エンジン後方にその軸心にほぼ垂直に設置。渦巻ケーシングは過給機の方が、排気タービンより大。

 ・排気タービンには軸流型の前置静翼。案内羽根通路はかなり狭い。

・各シリンダからの排気は中間冷却器の内側を通り、大直径の排気集合管(星型エンジン外周径とほぼ同一)を経て、2ヶの流入管を通り排気タービンの渦巻ケーシングに流入。

・排気集合管から排気タービン渦巻ケーシングまでの外壁は2重構造、冷却空気が外側通路を流れる。

・過給機からの加圧空気は2ヶの吐出管を通り、中間冷却器へ流入。

④過給機の空気取入口  以下の渦や偏流、速度欠損の防止対策をしている。

・ベンド形の流路断面は、長軸がベンド曲りに垂直な楕円形。曲り内周の剥離を抑えるためであろう。

・本取入口は境界層を吸わない様に機体側面から少し飛び出す。

 

 

 

 

​ この飛行機の大空へ適応拡散の直後に原動機はジェットエンジンになったが、レシプロエンジンは自動車で大きく発展。省エネや排ガス規制、信頼性・耐久性等の厳しい性能要求またコストダウンの中、1990年代に日本を中心に第2の頂点を迎えた(13)(14)(15)。筒内直噴等による過濃混合気点火の超希薄燃焼(空燃比1:50。熱効率50%超とNOx低減)や高圧噴射弁(微粒化、低ペネトレーション化)、ターボチャージャ等の自動車技術は水素燃料エンジンに応用されよう。その際の要点は下記であろう。

①水素は着火し易いので高温の壁面近傍へは流さない。また水素の噴流が拡散する前に点火。

②火炎の壁面衝突を抑えて、冷却損失を低減。

なお水素燃料エンジンや水素燃料電池は下記理由から、大型トラックやバスに使われるディーゼルエンジンの代用になる可能性が大だが、空飛ぶ車にも有利。

①エネルギ密度が高く、大出力。

②液体水素の高圧タンクはバッテリーより省スペースなので、荷物の積載量が大。

③航続距離が大。

 

【9】最近、思う事   

 4回生の6月に札幌の北18条東8丁目の弟の賄い下宿に転り込み、塩鮭に野菜たっぷりの味噌汁等の朝食を昼食にしての居心地の良い1週間。如才ない弟に国鉄の北海道周遊券と共に放り出され、ウトロ(Uturu ci kus i)からオホーツク沿いを巡った。更に辿り着いた高山植物の咲誇る花の島・礼文から見上げた、アンドロメダまでワープする程に深く澄んだ青の北国の空を最近、ふと想った。更に同島の南端、鰊番屋だった桃岩荘の厳冬の暴風雪に古びたベンチに座っり日本海に沈む夕陽を見てユーラシアを横断したいと思った。

  空穿つ 夕陽しるべに 祁連山

 張騫は漢の武帝の命で天馬を求め遥か大宛(フェルガナ)へ、祁連や崑崙、カルリク、天山、葱嶺の白く輝く万年雪の峰々を見やり旅した(祁連とカルリクは同語源で匈奴語の「輝く」や「天」。北方騎馬民にも日本人と同様の山岳信仰。また願為黄鵠兮還故郷、烏孫に嫁した劉細君も黄鵠となり山並を超え帰郷を願った)。その号に因み穿空と名付けた空飛車を作り、ユーラシア横断をしたい。

 ただアジアハイウエイは1979年のソ連のアフガニスタン侵攻、更にイラン・イラク戦争で杜絶。去年までは1991年に独立したウズベクやカザフ等、中央アジアのマー・ワラー・アンナフル(Mā-warā' an-Nahr、川向うの地)のトルコ系諸国経由で、その夢が叶うと思ったが、ロシア・ウクライナ危機で西ユーラシアの際限の無い争乱(アケメネス朝ペルシャとギリシャから十字軍、オスマン帝国の文明の対立。更に第一次大戦後の英仏による中東分割、更に21世紀初頭のイラク戦争やシリア内戦)が再燃。今年は3年ぶりに祇園祭があったが、中東での市民の間近にある凄惨な暴力の連鎖が欧へも波及中の2018年の同祭では、中国や欧米の観光客も含む大群衆を見て日本は平和と思う一方『これが21世紀の世界の本来の姿』と天啓の様に確信。また昭和の言霊、中島みゆきが名もなき人々と神に歌いかける「繰り返す過ちと哀しみを照らす灯をかざせ」、更に与謝野晶子が旅順攻囲戦の弟を思った詩「君死にたまふことなかれ」の一節「あゝをとうとよ、君を泣く、君死にたまふことなかれ、末に生れし君なれば 親のなさけはまさりしも、親は刃をにぎらせて人を殺せとをしへしや、人を殺して死ねよとて二十四までをそだてしや」をを母から教わった時の大きな衝撃も思った。この詩は彼女の個人的悲しみの昇華だけではなく、額田王や紫式部以来の才長けた自由な魂の女性、かつ天下の台所、大阪の富家に生まれた『輝かしくも過ぎ去った極東の平和』(17世紀初頭から19世紀中葉のアヘン戦争、黒船来航までの250年間の日中韓による平和。その間、欧各国は近隣諸国と戦争や併呑。また世界を植民地化。この泰平の眠りから中国はアヘン、日本はたった4杯の茶で叩起こされ、帝国主義の猛嵐に巻込まれたが)の最後の申子が神の依代となり詠んだ『戦争の世紀、20世紀』(その後、欧自壊の2大戦、太平洋戦争、アジア・アフリカの独立戦争、冷戦、中東の争乱)への挽歌・慟哭と思った。この2大戦の戦場となった欧日はその惨禍に強い認識がある一方、殆ど自国が戦場にならかった国の非常な危うさを感じる。

 ただ史上最大の激戦地(独ソ戦)、更に国連の常任理事国であるロシアによる今回のウクライナ侵攻では、ウクライナ国民は悲惨。少女の頃、独ソ戦も経験したと思われる90歳位の老婆が萎れてヨレヨレのスカーフで寒さをしのぎ、わずかな家財道具をキャリーで引き、とぼとぼ歩く後ろ姿には中小国の悲哀。第1次大戦時の1916年のダブリンでのイースター蜂起に因み「ワイルドギースよ、祖国の空に舞え」と歌うアイルランド民謡「靄の露」も想起。欧でもジョンソンのブレクジット等の自国第一主義が蔓延。大英帝国復活は時代錯誤の亡霊・妄想だが(国力が見合わず、せいぜいパブのオタ話)、ウクライナはボスニア紛争と共に1991年の揺り戻しであり深刻。ウクライナは建国早々の1240年にモンゴルに征服され、その後もポーランド・リトアニアやオスマントルコ、更に分家筋のロシアに支配され(今でもこれら国々の思惑・利権も錯綜)、欧では数少ない他国を侵略しなかった国のためか、欧の同情も集まるが、下記も大きな衝撃である。

 ①核兵器による威嚇は、唯一の被爆国の国民には大衝撃。光速でクリーンな高出力レーザー兵器の出現(各国で開発中の様)による核の無力化を切望する。

北極上の静止衛星が(南半球には核保有国は無い)、赤外線センサーでICBMの発射熱を検知し攻撃。勿論、レーザーは光速(30万 km/s)なので、発射地点で弾頭を破壊。

 ②19世紀から20世紀初頭のロシアは世界で最も侵略的で凶暴な帝国主義国家であり、北欧(フィンランドやエストニア)や東欧(ウクライナやポーランド、ベラルーシ)、クリミア(アヘン戦争、ボーア戦争と共に、最も醜悪な侵略戦争と言われるが)、カフカス、中央アジア、更に外興安嶺から沿海州を併呑・南下しイギリスと覇権を争い日露戦争に至った。日本はイギリスと同様、海洋国の利を生かし日本海海戦で一気に決着をつけたが、日露戦争によるロシア衰退が欧のパワーバランスを崩壊させ、フランスのドイツへの恐怖と復讐心が自動参戦同盟を生み欧自壊の2つの大戦を惹起。今回のウクライナ侵攻も3度目の大戦の引金の懸念もあろう。

    周囲が海の日本の地政学的有利さは、欧中央にあり地続きのフランス(エルゼス・ロートリンゲン併合等)やロシア(1795年のポーランド分割、更にナポレオン戦争以降、プロシアを属国扱い)と屡々、戦争をしたドイツが羨むとの話もあり。また対馬海峡(幅200km)はドニエプル川は勿論、ドーバーより遥かに広く、更に潮流が速い上に台風や冬の季節風で大荒れ。  

 ③戦争の世紀20世紀だけでなく21世紀に入っても、中東では憎しみと暴力の連鎖が日常茶飯だが、それが欧に波及したのが本質。

 ④欧自壊の2大戦の深刻な反省に基づく領土不拡大と武力不行使の原則(国連憲章、更に1986年の国際司法裁判所判決で慣習国際法になる)も破られた。

   なおオイラ-のケーニッヒスベルクの7橋で有名な東プロイセン、また帰属未定の北方領土(千島列島や樺太)も、国際法の権威や整合性の上から本原則で解決すべきである。

 世界はコロナとウクライナ、更にこれらによる経済・エネルギ・食糧危機により混沌だが、日本の活路はやはり21世紀の繁栄中心アジアへの選択と集中。アジアの平和(自由貿易や交通、観光の担保)を保持しTPPやRCEP等によりローテク量産品や高付加価値製品、高額プラントを輸出し持続的発展の原資である外貨を稼ぐだけ(産油国や欧との貿易赤字も課題。なお欧のアジアでの事業拡大は、天然ガス高騰や貿易路の長大化等の大逆風)。日本企業はバブル崩壊以降、厳しい事業環境や国際競争を凌ぎ、企業人は数々の成功体験を持つ(往々にして金科玉条や訓詁、更に呪縛になるが)。一方、私は所謂、関西ケチ会社の技術屋だったが、事業部がちょっとでも赤字を出せば本社の管理部門が乗込んで来て事業清算、部門員は左遷先で協力会社なみの冷飯。この皮膚感覚からすれば、今の日本の貿易赤字は非常にやばいと思える。

 日本はやはりアジアの一員。中尾佐助門下のダショー西岡京治のブータンでの荒地開墾と野菜栽培・品種改良また中村哲博士のジャララバードでの砂漠緑化等も同じアジア人の目線で人々の心と生計に細やかに寄添った偉業と思う。

2005年の鈴鹿F1では、自動車は全てcaballo(スペイン語で馬)の牽く馬車に見える車音痴の私もF1車の空力形状には興味津々。caballoの語源は俗ラテン語の駄馬caballus、ローマのProvinciaのケルト人も雑居の植民都市の猥雑な雑踏を思わす。更にペルシャ語のkaval説があり、アナトリア各地のヒッタイトやアヒヤワ以来の諸民族混住のテペ経由で、荷馬車は文明ヨーロッパへ運んだろう。一方、北風の向こうの賢人国ヒュペルボレイオイの更に東の中国では斉の管仲の富国策(物価安定や塩鉄絹の専売)と桓公の覇業後、楚が令尹の子文により躍進、漢江沿いを北進し中原の鄭や周に迫った。晋の文公(重耳)は城濮で三舎を避けた後、下軍の佐、胥臣が戦車の牽馬に虎皮を被せ先陣をきり楚軍を撃破。30年以上の暴政で不遇の士会(劉邦が遠祖と仰ぎ、秦亡命や五公の光輔の義と信を邯鄲救援の魏の信陵君と共に敬愛)を車右に抜擢し黄河を渡り凱旋、春秋第2の覇者となった(BC632年)。文公は宰相の器の狐兄弟や趙衰らと諸国を放浪(義経と同様の流離譚。苦難の英雄は千年の時空連続体を超え流浪し、今も人々が愛す)、衛の五鹿の土塊に天意を知り馬車に祀り神樹の桑下で誓う。斉では桓公に後事を託され、宋や楚、秦の名君の知遇も得たがこの様に、春秋左氏伝(春秋の歴史自体)の最大の山場は最初にある。その史記や漢書等の正史と同様の主題『名臣による国々の興隆』は張良や曹操、唐宋の草創・守勢期の名臣が中国の長い歴史の中に自らを位置づけ内省・行動する指針・理念とした(日本では大江匡房や福沢諭吉も愛読)。

また日本は当時、循環型で省資源・低環境負荷の縄文時代。1万年以上も自然と共生し(森や海の恵み)、数々の原罪とその負の遺産と手前勝手の多重基準のパンドラ的箱を持つ(自然破壊・砂漠化と地球温暖化また自然国境論等による隣国の侵略・併呑や植民地の専制支配、奴隷等)、一神教の峻別的二元論(善悪や敵・味方、all or nothing)また際限無き欲望の収奪型文明とは対極(文明はその収奪性と空洞化のため、他文明だけでなく自らも危機に曝し滅ぼすこともある)。マンモス狩猟民は2万年近く前に人類史上で最高の利器、細石刃(鉄器以上の耐環境性また軽量、低生産コスト)により氷河期にシベリアからアメリカ大陸のパタゴニア(アフリカから最遠の地)まで進出したが約2万年前、環日本海から長江の森で人類初の土器作りと定住(堅果や鮭を貯蔵・発酵や煮炊し越冬)。続く縄文人は土器や道具を機能分化し形状や大きさを多様化(金属器は単なる材料革命)。その豊かな精神文化はメビウス帯や火焔、渦等の複雑なトポロジ文様と心躍る情念の造形も生む(既に高度に発達した木工や組紐の応用か)。

また1789年頃、欧で誕生の近代国家は政治・経済的に行詰まり陳腐化。EUはその打開策だがドイツの1人勝ちやイギリスの離脱や少数民族の分離独立運動(スコットランドやカタルーニャ、バスク、ブルターニュ、オック、エルゼス・ロートリンゲン、プロバンス、コルシカ等。力による隣国併呑の負の遺産)、アルジェリアや中東等からの移民・難民の差別や構造的格差・貧困等で前途多難。また21世紀になっても今だ20世紀、更にはこの近代国家の原罪は克服・清算されず欧域外では、ドイツはナミビアでの1904年の民族浄化の正式謝罪と実質的賠償(1500億円)を2021年に行ったが、その他の国はこの過去の植民地での不都合な事実の謝罪・賠償にも沈黙(声高に叫ぶ「自由と人権」とは対照的)。例えばフランスは第2次対戦後も植民地を手放さず、ディエンビエンフーの次は犠牲者が数100万人と言われるアルジェリア独立戦争。一方、欧域内では上述の分離独立運動が盛んだが、EUはその理念に逆行のためか沈黙。また本問題は欧各地で長い歴史的経緯、また非常に複雑で多重基準であり、北アイルランドでは原住民(アイルランド系)とイングランド系植民者がほぼ同数。スコットランドや北アイルランド、カタルーニャでは独立派が議会の第一党になっている。一方、ズデーテンだけでなく東欧全域のドイツ人、数100万(神聖ローマ帝国の12世紀以来の東方植民またハプスブルク帝国期にドナウ川沿いにルーマニアのトランシルヴァニアの7都市ジーベンビュルゲンまで移住)は第2次大戦後、ドイツへ強制追放。             

世界各国は『自国第一主義』(2流国戦略。超1流国は中国の漢や唐、清、また1960年代のアメリカの様に自由貿易またバラマキ的援助外交)、一方、国際法・慣習は不成熟で不整合、2重基準なので(また欧の近代国家群のみの力による取決めも多い)、紛争・争乱は今後も頻発の可能性があり。また地球温暖化と同様に『過去の過ち・罪は自ら清算・断罪しない限り、自らの未来の大きな危機・脅威になり連鎖(自業自得)』になろう。また被害者は決してその事を忘れず、更には自らの行為の免罪符にする歴史的事例も多い。例えばのヴァスコ・ダ・ガマの1497~1524年の航海はインド等の各国での猜疑と略奪(約半世紀前の1405~1433年の、鄭和の互恵的な南海大遠征とは大違い)。イベリア半島征服の後ウマイヤ朝やバルカン半島を勢力下に入れウィーン包囲のオスマン帝国を免罪符にし、後続国もこの姿勢を受継ぎ、欧の近代国家の原罪の1つとなった。

 ウクライナや中東との所謂、文明の衝突は欧の問題である。また東西のユーラシア地域は歴史・地理的に関係性が薄いので(15世紀から20世紀までのアジアの大災難、植民地の専制支配とその負の遺産以外は)、日本またアジア各国がこれらに関る義理は無い(識者にも同様の意見あり)。またASEAも非常に合理的であり、植民地支配の非常に苦い経験からか、ASEAは域外勢力による域内の緊張に非常に敏感である。

この様に世界には今、多数の難題があるが、各地域の問題は歴史的・地理的に固有で性質が大きく違うので、アジアや欧単位で解決すべきと思う。また最近、軽視されがちな国連を話合い・利害調整の場とする『国連尊重主義』(『第一』では無くても)が必要と思う。また構造的貧困の中のアフリカや置去りにされた国々に配慮し、その暴発を防ぐ必要もあろう。『金持は喧嘩せず、金儲け第一』だが、力を振りかざす貧者への配慮も必要。

また大手企業の事業規模は欧等の中小国以上またSNSが世界市民を生み、近代国家は相対的に卑小化し世界は今、持続可能な開発(SD)のお手本として縄文と江戸時代を注目。後者は日中韓による17世紀初頭から250年間の世界史上、稀な長さの極東の平和の下(その間、欧は隣国と戦争ばかり。更に戦乱また世界を侵略・植民地化して19世紀初頭には極東へ。中国はアヘン、日本はたった4杯の上喜撰で、泰平の眠りを叩き起こされた)、新田開発や城下町の豊かな庶民文化、 更に世界史上空前の旅行ブーム。

また日本人の自然観は、山部赤人が万葉集で続けて詠んだ富士や石鎚の高嶺の羇旅歌(巻3-321と322。遠祖小楯も偲んだか)また能因や芭蕉の白河の関の様に、踏みしめ歩き地主神・国津神を言祝ぎ、自然や時や人へ様々の想念を巡らす依代。また歌人(赤人や大伴家持、西行、鴨長明)や俳人(芭蕉や蕪村、一茶)、中国では司馬遷や陶淵明、王維、李白等が自然を崇愛し放浪や隠棲。また東アジア各国が2000年以上の互恵的交流・経済の中で育て共有した文化(庭園や山水画等)の根本も超然と大なる絶対物・自然の崇敬とそれによる己が卑小の自覚(また最遠まで出アフリカしたモンゴロイドの10万年以上かけた自然への適応拡散、DNA進化か)。学生時代の朝夕、錦林車庫行の市電2番に揺られ賀茂大橋を渡る度に、千載清き賀茂と高野の流れや下鴨の社叢、間近に迫る比叡山を仰ぎ見た。ゆく河の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず。京文化と四季の庭々への感応は、日本の哲理の精髄(自然崇敬や無常観)。

 また政治・軍事力を失った氏族は屡々『文化王』になり時代を超え存続。古墳・飛鳥時代の国造・地方豪族は社家(宇佐や出雲、大山祇、熊野、諏訪)や高僧・祖師(役小角や行基、空海、法然、一遍)。藤原氏や武士台頭以降の文化貴族では半家・家元(儒学や兵法、和歌、蹴鞠、香道、華道等)。教皇庁にはローマ貴族。フン東帰の452年以来なので、日本の文化王と同時間スケールだが、春秋時代のBC551年産まれの孔子の嫡孫は79代目。この様に文化は時代(社会や経済、政治)より普遍永続(10 3年オーダー)で上位なので、縄文や江戸時代の大元にあるアジアの価値感(大愛寛容や倹約勤勉、謙虚、自然との共生・回帰)も世界に広まろう。また日本やアジアはこれらを理念(オポチュニズムのみなら、進路はふらつく)として積極的に世界へ提示すべきと思う。これらの普遍性と強さは400年以上の過酷で非人道的な植民地支配の中でも、アジア人が持続け今に至った事でも明らか。また関連して、下記も思う。

①自由等の基本的人権は主権者の政治的属性(憲法による主権の保障)であり、それ以上でも以下でも無い。一方、 思想・信条の自由は人である絶対条件(人は考える葦)、また学問や芸術を産むので極めて文化的と思う。

②「Liberté Égalité Fraternité」等は多重基準(近過去の植民地、また今も難民等には不適用)またオールマイティの手札に使われ過ぎて理念としては生臭く手垢がつき過ぎている。

③世界は今後、豊かな固有文化・言語、社会・共同体を持つ少数民族や先住民、マイノリティの多様なコミュニティが、互いの尊厳を尊重しあった上で、社会インフラと経済活動を互恵的に共有する緩い共同体(アジアや欧単位)へ移行か。

④国内避難民5320万人を含め世界中の難民は1億人以上(16)。人は故郷(即ち生活、文化、自然)で暮らしたい、また避難先では3等国民以下の扱い(経済的・政治的差別や構造的格差・貧困)なので、難民は本質的に出してはいけないと思う。なお国連は難民対策も行っており、日本はそれに協力するだけの事。高等弁務官の緒方貞子氏が有名だが、優しく共感性の高い多数の日本人女性 が難民また平和や社会的弱者、女性への様々の問題の解決に活躍。

⑤また先住民3.7億人の人権回復や社会的非排除(社会や福祉、経済からの)も国連の「先住民族の権利に関する国際連合宣言」により世界的動きになったが、やはり故郷への帰還が第一であろう。

 上述の様に21世紀はアジアの世紀だが、その弱点は45億人の1日10^N回の接触・往来(気体分子運動論・統計力学の正準集団的)と変異多発のRNAウイルスと思う。コウモリは超音波を使い世界中のニッチの夜空へ適応拡散し哺乳類中、最繁栄(絶対数も種類も多。哺乳類の約6,000種内の25%)。食性は鳥と同様に効率的、栄養価の高い小型昆虫や果実等を食べ、大きさも小笠原のオオコウモリ(翼幅2m)から中米の熱帯雨林のシロヘラコウモリ(蛙程でオウムバナの大葉の屋根の下で群生)まで様々。洞窟内で超3密生活のため高度な免疫システムを持ち多数のウイルスの宿主。

 また人の細胞内は絶好のRNAワールドなので、様々のRNAウイルスの脅威への備えは今後も要りそうだが、主権者の「高貴なる責務」(ノブレス・オブリージュ)である自制・自足・利他また参画・当事者意識(国民の主権の一部を議会に委託する投票と共に重要)であろう。また企業人時代の実感、肌感覚は『組織も結局、各個人とその責任分担』(プロジェクト長や課長等の実務キーマンとその部下達)。神輿は全員で担がなければ前進は勿論、持上がらず、また1人でもぶら下がれば、全員に大負荷。

 日本国民は3密防止等でコロナ感染者数を欧米より大幅に抑えたが、欧米人の一部は自由を理由にマスク着用を拒否。他の主権者の健康と命(中等症Ⅱでも重篤な肺炎)や生計(派遣社員や中小企業、飲食店等は収入の大幅減や失業。また家賃等の固定費に苦労)に対する本責務の放棄と言える。牧童が大平原で声高に一つ憶えで「自由、自由」と叫ぶは些事、「野原でも駆けとけ」で済むが、都市内ではイギリスやインドの様に感染爆発、凶悪な変異型を産む。

 なお際限の無い欲望と利己を抑える自制・自足・利他は、今の世界が抱える様々の深刻な問題(上述の近代国家の原罪の負の遺産)、地球温暖化や資源・食糧問題、乱開発、熱帯雨林や生態系、生物多様性の危機、食品廃棄、また全員参画社会や持続可能な開発(SD)、途上国の構造的貧困、自然や生命との共生等、深刻な問題の解決のための基本であろう。道徳はやはり重要、例えば「敬天愛人」は下級武士出身だが実務に長けた能吏の西郷隆盛を偉人にした。

 なおコロナは変異型が次々と出現し終息しないが、感染爆発の日変化曲線の成長曲線の立上り期の対策は『感染者全員の2週間の隔離(簡単で大効果)』であり(または実効再生産数0.8程度の達成か)、人的・社会的・経済的な負荷も損失も結果的に小さく、通常の社会・経済活動も可能と思う。『社会現象は過去・現代・未来時空連続場。そのメカニズムは物理現象と同様、含め十分な検証・科学的分析が可能』拡散(特にある量の勾配が大きい境界域。正に『文明は辺境から』)や波的アナロジーもあり、物理数学によるモデル化や現象方程式の定式化による定性・定量評価もできよう。また「前車の覆るは後車の戒め」(漢書賈誼伝)、現代の諸問題は過去の類例と反例、特に『近過去に不採用の選択肢は、近未来の最善策(後知恵も含め)。歴史にもしもは有り』であり、コロナの教訓は、今後の新たなRNAウイルスの感染爆発防止策を示そう。

 工場の量産品は高度で徹底した生産技術・管理下なので、無作為抽出検査で十分の統計的有効性があるが、コロナの感染爆発は未知で不確定要素がまだ多い。更に正準集団的な社会内での混合拡散(池浄化と同様、入口・上流での分別が重要)、また加振力(飛語等も含め)のある非線形で正帰還の強制・自励振動も生じる生物的また社会的現象であり、また変異も頻繁なので、感染爆発初期は抗原検査等の社会的検査により感染源と経路(場所や職種)を特定し実効的で対費用効果が大の対策をする必要があろう。

 関連して評論家の科学的議論が浅薄、二言目にはAI(単なる相関や統計等による類推であり、理論的手法では無い)、また単純平均的なのも気になる。その実態やメカニズムを掘下げるべきである。また正規分布から外れ、また異常値が多い場合の統計は、中央値や最頻値また高次統計量(歪度Sや尖度K等)で評価すべき。また成長曲線(ロジスティック曲線、確率密度関数。正規分布と比べ裾長でありK=6/5、分散σ=π2S^2/3)もこれらを用いれば一喜一憂なしで、その状況や抑制の定量比較・評価もできよう。例えば検査数(母数)が統計的に不十分ならσやSは大。また感染爆発の立上り部を遅らせ最大値を抑制できればKは大となろう。

 またRNAウイルスは約35億年前、DNA生物(古細菌から人まで)と別れ独自進化したので、細胞の自己複製に大きな相違がある。そこで下記の様な複製阻害剤のコロナへの適用に期待したい。

 ①RNA合成酵素のRdRpの阻害 ファビピラビルやレムデシビル(元々はインフルエンザやエボラ出血熱用)。

 ②プロテアーゼ酵素(パパイヤのタンパク質分解酵素に似る)の阻害 HIVやHCV(C型肝炎ウイルス)で実用化済み。

   コロナのmRNAは複数のタンパク質の情報を持ち、1本のタンパク質の鎖(ポリペプチド鎖)を人細胞のリボソームに合成させる。プロテアーゼ酵素がこの鎖を、個々のタンパク質に切断(RNAウイルスの独自進化か)。

 人の細胞内は絶好のRNAワールドであり、コロナは先祖返りし次々と変異・進化中か。なお『遺伝情報を持ち、遺伝子とタンパク質を複製できる物が生命』だが、DNA生物の自己複製もRNA生物と同様、RNAを用いるので、RNAこそが生命であろう。DNAはRNAが遺伝情報を書込んだ巻物(辞書)に過ぎないが、その二重螺旋構造は下記特性を持つ。

 ①二重螺旋は保存用(センス鎖)と転写用(アンチセンス鎖。遺伝情報に必要な分だけmRNAに伝達)に機能分化。

 ②そのまま受継いだ保存用は転写した螺旋と照合するので、DNAを正確に複製。

 またDNA生物は遺伝子の構造が単純なので(二本鎖。RNA生物は一本鎖もあり)、RNA生物からのボトルネック進化の様だが、上記特性を獲得した生物が遺伝情報を正しく伝え、どんどん複雑化し知性までも生んだろう。

生命の初期段階では、RNAの変異の多さが進化の原動力だったが、構造が複雑になると遺伝情報を正しく伝える必要があろう。遺伝子の膨大で複雑な構造の正確な伝達の決定的重要さは、数10億年の時と大型化(ウイルスは20nm、鯨は30m。10^11のオーダー差)、更に哺乳類や鳥への進化で明らか。

 なお日本は今、幾つかの課題があるが、IT・デジタル化や国民所得もエストニアや北欧の中小国(人口が数100万人でGDPも小)と単純比較した議論が評論家等の間にあり気になる。

 ①『IT・デジタル化は上位目的とそのための手段を明確化の上、必要最小限にしないと、膨大な費用・手間(初期と維持管理、更に機密・保安)が発生。サイバー攻撃等の非常に危険かつ不確定要素も多い。

   *企業人時代に、製品開発のためのCAEソフト導入等も担当したが、下記は実感である。

    ・ソフトは未完成かつどんどん陳腐化。また半年毎のバージョンアップも曲者、単なる不具合改善が多いので、パソコン大好きの部下には「2年に1回、纒てしろ」と言った。

    ・若手や文系間接部門員はITやソフトの結果を盲信して思考停止。ソフトは人が組込んだ物理数学モデル以上の結果は出さない。

    ・コンピュータは『理論的思考』はできないので、その馬鹿力(メモリ容量と計算速度)を使うだけの事。

   *最近、欧の小国のデジタル化の成功が喧しいが、社会・産業が発達した大国のITシステムには、そのスケール効果による膨大な費用や陳腐化や非拡張性の大穽陥。

 ②官公庁や地方公共団体の行政デジタル化は、大手企業(事業規模や事務処理は欧の小国より大)のITシステムがそのまま使えよう。住民サービスは企業が30年前から使い経験と実績のある福利厚生システムで良い。

 

<参考文献>

(1) 空飛ぶ車の検討(内部資料)

(2) 日本機械学会、管路・ダクトの流体抵抗(1979年版)、96-99

(3) Icon Aircraft社、https://www.iconaircraft.com/a5/accessories/

(4) ASME Historic Mechanical Engineering Landmarks #238 Sto-Wing

(5) Universal Hovercraft社、https://www.hovercraft.com/content/

(6) 辻正一、容器内流れ学(初版)、日刊工業新聞社、53-55

(7) ターボ機械協会、ターボ機械 入門編(第5版、1994年)、138-139

(8) ターボ機械協会、ターボポンプ(初版、1991年)、22-27

(9) BRS航空機パラシュートシステム、https://brsaerospace.com/

(10) バルカー、インフラートシール、カタログ番号 LC07

(11) R.K.G.テンプル、中国の科学と文明(1992)、河出書房新社

(12) 赤木新介、機械工学におけるシステム設計教育、日本工業教育協会誌32-1(1984)、29-35

(13) 橋本 徹、リーンバーンのためのトルク検知制御、日刊工業新聞記事、(1993)

(14) 瀬名智和、エンジン技術の現在過去未来、(1997)、グランプリ出版

(15) 御子神隆、トラック用ターボチャージャ、日本ガスタービン学会誌、28-3(2000)27-31 

(16) 国連UNHCR協会、 https://www.japanforunhcr.org/about-us

                                 弊所原稿受領日:2022年7月29日

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