<北京・洛陽紀行>2019年11月7日午前中(四日目)

(by S. Miyauchi, Professional Engineer, Doctor of Engineering, JSME Fellow)

7日の洛陽はガイドの于愛紅さんと是非、行きたかった天子駕六博物館。周王の6頭立て馬車と、その前後の2頭立てや4頭立ての多数の馬車は、2500年以上前の栄華の後。次に洛陽博物館で仰韶、竜山文化から唐までの文化財。特に東周王女の斉への降嫁を金文に記す大きな青銅器は印象的、春秋左氏伝の世界に迷込んだ気がした。

 また竜山文化では高火力窯による薄くて高強度の黒陶の器が、形も大きさも機能も様々に分化した事を実見し、于さんへはやや興奮気味に「これも本では見た事あるが、実見は初めて」。後の殷文化の特徴的な三足の鼎もあり、金属器は単なる材料革命と改めて思った。東アジア人は人類で初めて土器を発明し定住生活に入ったが、器はその後、貯蔵だけでなく様々の発酵保存食や蒸・煮炊き等、東アジア特有の食文化を生んだ。また茶陶信楽の大家である奥田英山先生や迫能弘先生に、素朴な感想として「日本の陶磁器は器、欧は皿」と1ヶ月前に言ったのも思い出した。この中国の1.2万年の年の文明連続体の華麗で雄大な文化を実見していると、今日も様々の想念がよぎった。更に漢代の望楼のある商家や豚小屋、井戸等の陶俑から、庶民の暮しにも思いを馳せた。

 また周代に既にあったララチェット歯車(勿論、逆転防止だが、その用途は?)や青銅製軸受(馬車の運搬性や高速性、耐久性が大幅向上。広大な国土の有力な輸送手段となった?)にも驚いた。中国は鋳鉄(BC7世紀。欧に2100年、先行)、磁器、紙、三大発明(火薬、羅針盤、活版印刷)、クランク機構(鞴駆動用水車。 逆転すれば、ワットの蒸気機関)、閘門、円弧橋、吊橋、ジャンク(水密区画、バッテン付き縦帆、釣合舵、穴開き舵、アカ汲み用鎖ポンプ等)、鐙、弩、馬鎧等の多数の技術が、西ユーラシアに数100年以上先行した事を、このラチェットや軸受で実感。

 弩の引金を2014年にハルビン博物館で実見した時と同様の得心もした。弩の引金は殷・周の青銅器の鋳造技術の応用だが、精密で複雑な3軸機構であり、3部品はレバーとストッ パ機能を持つ。本引金を引くと、矢は巻上げ機により高張力で張った弦より低伸弾道で発射。射程は長く、貫通力も命中精度も高いので、銃以前では最強力の武器だったが、斉の孫子(孫臏)はBC341年の馬陵の 戦いで、弩で騎兵を圧倒して魏から覇権を奪った。その後も長城の守備隊が、弩の威力で北方騎馬民族を防いだ。5 日の清華大学美術館の兵馬俑でも弩兵は非常に印象的(私の机の上にも、その小レプリカがあり)、弩を腰だめしての待機は「3列交替射撃」のためか?本射撃法は8 紀の唐の通典には載っており、織田信長が1575年の長篠の戦いで、当時、日本最強の武田の騎馬軍団に対して3000丁の火縄銃で行った「3列交替射撃」もその応用の可能性がある。


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