(「英文読書術 イギリスエッセイ編」(行方昭夫・DHC)のP14)から)
【1】原文:
‘Only the amateur poet,’ he said, ‘can know to what depths of insincerity human nature can descend.’
【2】質問:
1.全体構造をどのように理解すべきか?
2.文中のwhatは疑問(代名詞)か関係(代名詞)か?
3.to whatのtoは必要か?
【3】検討:
1.全体構造をどのように理解すべきか?
(1)語順を通常に戻すと以下のようになる。
He said, ‘only the amateur poet can know to what depths of insincerity human nature can descend.’
(2)whatは疑問(代名詞)か関係(代名詞)か?
この文章においては、whatは疑問(代名詞)である。
例えば、以下の文章を考えてみる。
(*descendには自動詞と他動詞とがあるが、to を伴う場合は「降りる(下る)」の意味の自動詞)
Human beings can descend to the depth of ten meters.(人間は10メートルの深さまで降りることができる。)
↓
To what depths can human beings descend? (人間はどのくらいの深さまで降りることができるか。)(≒ How deep can human beings descend?)(➡深さは「疑問」点である。)
↓
Does anybody know to what depths human beings can descend? (人間がどのくらいの深さまで降りることができるか、誰か知っているか。)
↓
Nobody but the amateur poet can know it. (素人詩人以外、誰も知り得ない。)≒ Only the amateur poet can know it.
↓
Only the amateur poet can know to what depths of insincerity human nature can descend.(素人詩人のみが、人間がどのくらいの深さまで降りることができるかを知っている。)
(同書の参考訳:「 人間なるもの、いかに不誠実の深見に落ちうるか、それを知るは素人詩人のみ。」
(4)to whatのtoは必要か?
必要である。
① 本文中のdescendは自動詞なので、「へ降りる」の(…へ)に対応する前置詞が必要である。
② 前置詞がないと、他動詞になる(例えば、We descend the hill. 丘を下りる。)ので、降りる対象が必要となる。しかし、本文のように、「descend the depths」(深さを降りる)は通常の意味を有する文章として成り立たない。
【4】深掘り what
Whatが疑問代名詞か関係代名詞かについては、明確な場合、不明確な場合、どちらとも取れる場合があるようである。要するに文脈で判断せざるを得ないか?
例文1:He knows what it meant.
→ 彼はそれが何を意味したか(どういう意味であったか)を知っている。(疑問代名詞)
→ 彼はそれが意味したことを知っている。(He knows the thing which it meant)(関係代名詞)
この例文のような場合は、疑問代名詞と解しても、関係代名詞代名詞と解しても、実質的な意味は結果的に同じなる。
例文2:He knows what day today is.
彼は今日が何の日かを知っている(あるいは、彼は今日が何曜日かを知っている)
→ この場合は、疑問代名詞に限定される。
例文3:He wants what he likes. (He wants the thing which he likes.)
彼は自分が好きなものを欲しいてる。
→ この場合は、関係代名詞に限定される。
一般的には、the thing whichに置き換えることができる場合は、関係代名詞のwhatのようである。
以上
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